小田順子からのメッセージ(あとがき)

あなたが送るたった1通のメール。
たった1通ですが、そのメールが大きなトラブルに発展することもあれば、
熱烈なファンや応援者をつくるきっかけになることもあります。

これは私が、職員3,000人、クライアント30万人の組織に
勤務していたときに得た経験です。

といってもこれは企業ではなく、区役所なのですが、
当時、私はお客様の相談・苦情の受付窓口と
広報(ウェブマスター)の両方を担当していました。

区役所には、手続きなどに関する問い合わせや、
「ホームページがわかりにくい!」、「職員の態度が悪い!」
といったクレームが毎日のように来ます。

その対応をしている中で、不思議な体験をしました。
単純な問い合わせなのに、途中でクレームに変わってしまったり、
ビッグクレームなのに、結局ほめられてしまったりするのです。

これはどういうことなんだろう……と考えてみました。

そこで気付いたのです。
メールは用件だけではなく、想いを伝えなくてはダメなんだ!ということに。

例えば目の前に、手続きをたずねに来たお客様がいたら、
笑顔で対応しますよね。
無愛想な対応をすればクレームにもなります。

怒っている人には、申し訳なさそうな顔で謝りませんか。
ヘラヘラしていたら、余計に怒らせてしまいますよね。

その表情や態度に込めた自分の気持ちを、
メールでも伝えられるよう、工夫してみたら
いいのではないかと考えたのです。

その結果、悪気はないのに怒らせてしまうことはなくなりました。
クレームのメールも、お客様とやりとりをしているうちにすっかり仲良くなって、
困ったときには助けてくださったり、失敗したときにもかばってくださったりということも。
(このときに使っていたテクニックは、本書の第4章「コミュニケーション編」にまとめています)。

この経験がきっかけで、メールやウェブサイトを介した
お客様とのコミュニケーションにすっかり夢中になってしまい、
ついには区役所を退職し、コンサルタントとして独立してしまいました。

現在は、在職中に得た経験を1人でも多くの方にお伝えする活動をしています。

「伝わる文章」を追求し、 人がよりよく生きるために必要な知識・情報を
発信することが私のミッション。今も大学院で研究中です。

「言葉」を研究していると、つくづく「難しいなぁ」と思います。
なかなか伝わらないものですよね。

それなのに、メールは言葉だけで想いを伝えなくてはならない

そう、メールは情報を伝えるだけではなく、気持ちを伝えるためのもの
コミュニケーションのためのツールです。

心のこもっていないメールを書けば、相手も冷たい、雑なメールを返してくるでしょう。
それでは仕事もスムーズに進みません。

逆にあなたのメールがわかりやすく、心のこもったものであれば、
相手もあなたを尊重するでしょう。

そうしているうちに、ふと気がついてみると、
あなたのお付き合いする相手がデキる人ばかりになっていた、
ビジネスのステータスがランクアップしていた……きっとそんなことが起こります。

区役所に入る前、そして辞めた後も、学習塾で国語を教えていました。
中学入試から大学入試まで、受験指導専門です。

国語の授業や試験が嫌いだった方もいらっしゃると思います。
でも、入試の国語のほうが、ビジネスシーンでの国語より、
実は簡単なのです。

正解があるからです。

ビジネスシーンでの国語は、相手がどう受け止めるか、どう感じるかが大切ですものね。

あなたのメールの使い方と言葉が、あなたという人間の輪郭を形作り、
仕事の成果や付き合う相手を決めるのです。

本書が、少しでもあなたのお役に立つことができればうれしく思います。
最後まで読んでくださって本当にありがとうございます。

あなたの毎日がいっそう輝きますように!